空圧電池 - 圧縮空気蓄電システムのこと|蓄電池バンク

蓄電池専門用語集 - 空圧電池

空圧電池(くうあつでんち)

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国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「電力系統出力変動対応技術研究開発事業」の一環として、神戸製鋼所が早稲田大学スマート社会技術融合研究機構、エネルギー総合工学研究所などと共同で開発した圧縮空気蓄電システム(CAES:Compressed Air Energy Storage)のこと。
2017年4月には静岡県賀茂郡河津町にて実証試験が開始されている。

風力発電によって得られた電気で圧縮機を動かし、空気をタンク内に圧縮。その圧縮空気を、電力が必要な時に開放して発電機に送り込むことで放電を行う。
リチウムイオン電池に代表される化学物質を用いた蓄電池では、二つの電極を用いて充放電を切り替えて使用されるが、空圧電池では圧縮機と発電機が別なので、充放電を同時に行うことができる。各部の構造が独立していることは大規模蓄電システム設置の際に設計を自由に行えることでもあり、シンプルであるがゆえに信頼性・耐久性に優れている。

もう一つ、空圧電池は空気だけでなく熱も利用している。
自転車のタイヤに空気を入れれば熱を持つように、空気は圧力を加えれば熱を持ち、圧力が下がれば熱を失う性質がある。空気の圧縮時、その温度は貯蔵のためにも常温にまで冷却する必要があり、逆に放出時には温度の下がる空気を加熱して発電効率を低下させないようにしなくてはならない。
この点において、空圧電池では圧縮した空気を熱媒体との熱交換によって冷却する。そして膨張時の温度低下に対して熱を蓄積した熱媒体を用いている。この排熱の蓄積・利用によって発電効率を保つだけでなく、全体的なエネルギー効率を高めることに成功している。

これまでのCASEは気密性の高い岩塩層を掘削して地下空洞を作って圧縮空気を貯蔵していた。1978年にドイツで、1991年にアメリカで稼働を始めたガスタービン発電所がその実例であり、CAESの構想が以前より存在していたことがわかる。
空気の貯蔵による蓄電・発電は、現在の主流であるリチウムイオン電池のように化学反応を用いないため、CAESの基本構造自体はシンプルと言える。しかし日本がそうであるように、岩塩層でなければ圧縮空気を貯蔵できるほどの気密性が得られないために、建造のためには場所を選ばなければならない。また、実例の二か所の発電所は空気を送り込む際にガスタービンエンジンを使用しているため、燃料のコストもかかるためエネルギー効率自体は低いものとなっている。
2015年、CAESを用いた風力発電がイギリスで建設が開始された。蓄電方式は空圧電池と同じく、風力発電の電気で空気を圧縮する形式で発電効率は高いが、加熱は天然ガスで行うものとし、貯蔵箇所には岩塩層を用いる。これと比較しても、設置場所の選択幅が広がる空圧電池の有用性をアピールすることができる。

そして空圧電池には、安全性および寿命という面でも特徴を見いだせる。
リチウムイオン電池やNAS電池は可燃性の高い物質が使われており、過去に幾度か事故を起こしてしまっている。だが、空圧電池は無害な空気の圧縮・貯蓄による蓄電池なので、火災や爆発といった危険性が少ない。
また電極の腐食や活物質の変質などを原因とする劣化という心配が少ない。それゆえに蓄電システムとしての寿命は長く設定されている。
廃棄する段階においても、有害物質やレアメタル・レアアースなどを使用していないことが処理を容易にしている点もメリットとして挙げられる。

世界で2015年の総発電容量が433GW、2020年には800GWに迫ると予測される風力発電。海外に輸出できるほどに空圧電池の技術が確立したならば、潜在的な需要は大きく、再生可能エネルギー導入の促進に寄与するものと思われる。

(参考:コベルコ 株式会社神戸製鋼所 http://www.kobelco.co.jp/

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