蓄電池の寿命

蓄電池の寿命は、蓄電池の種類や使用環境・状況、保守条件といった外部要因で大きく左右されます。
寿命とは言っても年数で表すには個体ごとの差が大きいため、一般的に充電→放電を1サイクルとする「サイクル回数」を用いて表しますが、防災・バックアップ用電源のように特定条件下以外でほとんど放電されない場合は、サイクルでなく使用期間で表すことが一般的です。

製品ごとにそれぞれ目安となるサイクル数や試用期間が定められていますが、この数値はメーカーが想定している使用方法に基いて算出されていることから、蓄電池の特性に合わせて適切に使用することが寿命や経済効果の向上に繋がると言えるでしょう。

ここでは、経済産業省の「蓄電池戦略プロジェクトチーム」によって以前に発表された資料「蓄電池戦略」(以下、資料という)を基に、各蓄電池の寿命やその充放電の方法について解説していきます。

各種蓄電池の寿命

鉛蓄電池は最も古い歴史を持つ蓄電池で、安価でありながら確かな安全性を備えていることから、主に自動車のバッテリーや非常時のバックアップ用電源などを始め、様々なシーンで使用されています。

資料によると、鉛蓄電池のサイクル回数は3,150回、年数にしておよそ17年となっており、蓄電池の中でも長寿命の部類に含まれます。

鉛蓄電池は、他の蓄電池と比較すると充放電サイクルの増加による影響はあまり大きくありませんが、正極に二酸化鉛、負極に鉛、電解液に硫酸を用いているという構造上、過放電した際には負極の金属に硫酸鉛の硬い結晶(サルフェーション)が発生し、著しく劣化が起きるという特徴があります。

サルフェーションを極力抑えるためには、「使用後速やかに充電する」「過放電を行わない」といった適切な使用を心懸けることが重要となります。
鉛蓄電池にはメモリー機能[※1]が存在しないため、放電深度が浅い段階で充電を行うことが特に有効と言えるでしょう。
※1 メモリー現象とは、ニカド電池やニッケル水素電池などの二次電池に見られる、容量が減少したように見える現象。継ぎ足し充電が原因となって発生する

【各種蓄電池の比較】
電池の種類 ニッケル
水素
リチウム
イオン
NAS
コンパクト化
エネルギー密度(Wh/kg)
×
35
△
60
◎
200
○
130
コスト(円/kWh) 5万円 10万円 20万円 4万円
大容量化 ○
~Mw級
○
~Mw級
○
通常1Mw級まで
◎
~Mw級
充電状態の正確な
計測・監視
△ △ △ △
安全性 ○ ○ △ △
資源 ○ △ ○ ◎
加温の必要性(運転時) なし なし なし ≧300℃
寿命(サイクル数) 17年
3,150回
5~7年
2,000回
6~10年
3,500回
15年
制限なし

ニッケル水素電池の寿命

リチウムイオン電池が登場するまで、様々なモバイル機器のバッテリーとして用いられていたニッケル水素電池。現在では、主にエネループなどを始めとする二次電池型乾電池として用いられている他、ハイブリッドカーのバッテリーや鉄道・モノレール用の地上蓄電設備にも採用されています。

資料によると、ニッケル水素電池のサイクル回数は2,000回、年数にしておよそ5~7年となっており、蓄電池の中では短い部類となります。ニッケル水素電池は鉛蓄電池と比べて寿命への影響因子が多く、周囲温度や充放電状況によって寿命が大幅に短くなることは避けられません。

特に、仕様範囲以上の高温での使用は、セパレータやシール材等の電池構成部品の分解が加速されるため、寿命を著しく低下させることになりますが、大電流充電をした場合には電池温度の上昇が起こるため、適切な温度管理が重要となってきます。

リチウムイオン電池の寿命

パソコンやケータイなど

現代の生活に欠かせないものとなったノートパソコンや携帯電話などのモバイル機器用バッテリーに必ず用いられるリチウムイオン電池。近年では、家庭やオフィスに設置する蓄電池としても普及が進んでいる他、大規模施設に向けた大容量化などの開発が推進されています。

資料によると、リチウムイオン電池のサイクル回数は3,500回、年数にしておよそ6~10年となっていますが、保存状態や充電方法によっては著しく寿命が低下する恐れがあるため、適切に充放電を行わなければなりません。

現在の期待寿命ですと、導入費用に対する効果は太陽光発電システムよりも感じにくいと言えますが、今後の需要拡大に伴い、期待寿命の長期化や市場価格の低下といった傾向が表れるのではと予測されています。

NAS電池の寿命

NAS電池は、エネルギー密度が非常に高く、鉛蓄電池よりもコスト面で優れた特性を有していることから、負荷平準化や再生可能エネルギー設備の系統安定化対策、また工場を始めとする大規模施設のバックアップ電源として主に用いられています。

資料によると、NAS電池のサイクル回数は4,500回、年数にしておよそ15年となっており、鉛蓄電池と遜色ない数値を達成しています。

NAS電池の寿命は、正極活物質による単電池容器の内面腐食に起因する容量の減少と抵抗の増加によって左右されるため、この部分の問題さえクリアすれば更なる長寿命化が期待出来そうです。

TOPへ