蓄電池の市場と産業構造
経済産業省の蓄電池戦略プロジェクトチームによると、世界における現在の電池の市場規模はおよそ5兆円程度で、2020年には20兆円に達すると見込まれています。
※リチウムイオン電池:1兆2,000億円(2011年)、NAS電池:200億円(2010年)、ニッケル水素電池:2,500億円(2011年)、鉛蓄電池:3兆7,000億円(2011年)
そのうち、シェアの5割を国内企業が獲得することを目標としており、国家レベルで蓄電池産業の発展を後押しする構えが有ることから、蓄電池産業は今後の日本の成長を支える重要産業として認識されているといっても、過言ではないでしょう。
とりわけそのエネルギー密度の高さから、既に携帯電話やノートパソコンといった電子機器に多く用いられているリチウムイオン電池については、今後さらに電気自動車等の車載用電池や家庭用蓄電池等としての用途の拡大が見込まれており、メーカー各社もこぞって研究開発を推進しています。
蓄電池普及の背景
2011年に発生した東日本大震災の影響から、日本国内のエネルギー政策は大きく見直されることになりました。原発依存から脱却し、化石燃料への依存度を下げるためにも、再生可能エネルギーの比率を高め、より自立したエネルギーシステム(分散型電源)を構築することが国家的に重要な課題となっています。
こうしたエネルギーシステムを構築する上で、将来的にスマートグリッドといったシステムを実現させる上で、蓄電池は社会インフラの一部として非常に重要な役割を果たすものとされています。
これらの背景に加え、一般社団法人 環境共創イニシアチブによる補助金事業や、環境省による「グリーンニューディール基金」、国土交通省による「エコカー減税」などの制度が整備されたことによって、蓄電池が注目され、普及を後押ししているのが現状と言えるでしょう。
蓄電池産業を巡る動向
日本は、かねてより電池の製造を得意としており、蓄電池生産量の世界シェア(2007年)はNAS電池で100%、自動車用ニッケル水素電池で74%、民生用リチウムイオン電池で57%となっています。
※現在のリチウムイオン電池のシェアは第二位となっている<2013年:テクノ・システム・リサーチ調べ>
現在は次世代自動車やタブレット端末のバッテリーなどとして、更なる用途・需要の拡大が見込まれており、中国、韓国メーカーや米国を中心とするベンチャー企業の進出によって、今後の更なる競争激化が予想されています。
蓄電池に関連する産業は原材料の開発・輸入、部材メーカー(正極材・負極材・セパレーターなど)、蓄電池メーカー、蓄電池ユーザー、関連サービス事業者など幅広く、実際に普及が進み始めた際には非常に大きな経済効果が見込めるでしょう。
利用環境別の蓄電池産業
前述したように、蓄電池の利用シーンは次世代自動車の動力源としての利用や、負荷平準化、再生可能エネルギーの安定化・電力貯蔵としての利用など多岐にわたり、シーンに応じて求められる蓄電池の性能はそれぞれ異なるため、大きく「系統用」「需要側定置用」「次世代自動車用」の3種類に分類して市場を捉えることが重要となります。
蓄電池の利用その1「系統用」
系統用蓄電池(NAS電池、レドックスフロー電池)は、更なる再生可能エネルギーの普及拡大に取り組むにあたって、導入が推進されていく分野であることは間違いありません。
政府は、2020年に世界全体の蓄電池市場規模(20兆円)の5割のシェアを国内企業が獲得することを目標にしていますが、そのうち35%を大型蓄電池が占めることを想定しています。
蓄電池の利用その2「需要側定置用」
現在、最も成長が見込まれている分野である定置用蓄電池。東日本大震災以降の電力需給が逼迫する状況を受け、特に定置用リチウムイオン電池への注目が集まっており、世界に先駆けて新たな市場が形成されつつあります。
ただし、現時点では導入にかかるコストが非常に高額であるため、一般層へ浸透するまでには至っていません。今後、各種法制度の整備や自治体による補助金制度の実施を行うことで一定の需要が生まれることが予測できますが、急激な拡大は難しいでしょう。
蓄電池の利用その3「次世代自動車用」
電気自動車やプラグインハイブリッド自動車が続々と市場に投入されており、最も現実的に世界市場を狙えることから今後確実な成長が見込める次世代自動車用蓄電池。
政府は、電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車について、現在0.4%である新車販売台数に占める割合を2020年時点で15~20%まで拡大することを目標としています。これらの研究開発は世界に先駆けて日本で開始されたことから、現在のところ車載用蓄電池については日本企業が高いシェアを確保している状況です。