2018年における蓄電池の動向
2018年のエネルギー政策
2017年の8月に提出された経済産業省の「平成30年度 資源・エネルギー関係概算要求の概要」の中には、2018年におけるエネルギー政策の方向性が記載されています。
その中で特に取り上げられていたのが「エネルギー利用の低炭素化」と「エネルギーセキュリティの強化」の二点です。
国立研究開発法人国立環境研究所が公開している「日本国温室効果ガスインベントリ報告書 2017年提出版」によれば、2015年の二酸化炭素総排出量は1,325百万トン。世界でも第五位に入ります排出量ですが、その四割近くがエネルギー転換部門から排出されています。
現時点の日本では原子力発電からの脱却が進んでいることもあって、電力の八割を火力発電に依存しています。再生可能エネルギーの導入・普及に伴って、二酸化炭素の排出量は2013年から減少傾向にありますが、東日本大震災が起こった2010年と比較すると、二酸化炭素排出量が1億トンも増加しました。
一方で、2010年には19.9%だったエネルギー自給率は2014年には6.0%にまで低下しています。これは原子力発電と違って火力発電では石炭や天然ガスなどを輸入に頼らざるを得ないからであり、自国のエネルギー需要量が膨大であるのに対して資源を他国に大きく依存してしまっている実情が浮かび上がってしまっています。仮に海外でのトラブルによって輸入がストップした場合、国内のエネルギー需要を賄うことができず、混乱を招くこととなってしまいます。
加えて、輸入依存のエネルギー事情は資源の輸入に多大なコストがかかり、そのコストは電気料金に上乗せされる形で消費者に反映されることとなります。
膨大な二酸化炭素排出量、低いエネルギー自給率、高コスト。
これらが日本のエネルギー事情が抱える大きな問題ですが、これらを解消するためにも「低炭素化」と「エネルギーセキュリティの強化」が求められています。
低炭素化とは温室効果ガスである二酸化炭素の排出を極力抑えることです。
太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーによる発電、水素エネルギーのインフラ整備、電気自動車や燃料電池自動車などの導入に対する補助金支援などが該当します。
上記は「二酸化炭素の発生を抑制する」対策ですが、省エネによって「エネルギー使用量を少なくする」ことも発電量の抑制、ひいては二酸化炭素排出量の抑制につながります。
特に住宅の省エネルギー化を推進するZEH(ゼッチ)においては、ロードマップで2020年までに標準的な新築住宅でZEHを実現するという目標が設定されています。発電施設に次いで二酸化炭素排出量の多い工場など産業施設への人工知能(AI)やIoTを活用した省エネ機器の導入も推進されるでしょう。
エネルギーセキュリティは、食料や安全保障と並んで、国家的な課題の一つに挙げられます。
近代社会の存立は電気なしに維持することはできません。また石油がなければ交通網の多くは機能しなくなるため、石油資源を中東に大きく依存している日本のエネルギー確保には不安が付きまといます。加えて、先に述べたように石油・石炭・天然ガスの輸入量の増加が、不安に拍車をかけています。
このような不安を軽減するためにも、再生可能エネルギーによる発電や水素エネルギーなどによるエネルギー源の多様化と自給率の向上、リスクの低い地域からの燃料の輸入によるリスク分散などが求められます。
近年では日本の領海内にメタンハイドレードやレアアース、レアメタルなど豊富な海底資源が存在することが確認されています。その調査研究や回収技術の開発も今後進められていくことでしょう。
2018年の蓄電池の補助金
数年前までは高額だった蓄電池ですが、その価格が急速に下がりつつあります。
各社の量産体制が整ったことや、新規参入の増加による価格競争、そして自動車用蓄電池を基にしたアメリカのテスラ社の蓄電池による価格破壊といった大きな動きによって、2020年には容量1kwあたり9~10万円ほどになると予測されています。
電力の効率的活用に欠かせない蓄電池はZEHだけでなく、エリア内の創エネ・省エネ・蓄エネを統合運用して一つの発電所のようにまとめて機能させるVPP(バーチャルパワープラント)、節電した電力量に応じて報酬を得るネガワット取引、電気自動車と連携するV2Hなど蓄電池の活用法も充実したこともあり、補助金がなくても需要が高まることが見込まれます。
また2018年には、再度蓄電池の補助金が支給されます。
<太陽光発電の自立化に向けた家庭用蓄電・蓄熱導入事業(経済産業省連携事業)>
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補助率等:
- ①設備費:定額(5万円/kWh、上限:1/3)
工事費:定額(上限:5万円/台) - ②設備費及び工事費合わせて定額(上限:5万円/戸)
- ①設備費:定額(5万円/kWh、上限:1/3)
- 事業実施期間:平成30年度~平成31年度
- 事業概要:住宅用太陽光発電設備(10kW未満)が設置されている新築又は既築の住宅に①一定の要件を満たした家庭用蓄電池、②蓄電池と合わせて導入する蓄熱設備を設置する世帯に対し設備費と工事費の一部を補助。
こちらの補助金は平成31年(2019年)に固定買取価格制度(FIT法)の買取期間を満了した住宅用太陽光発電が対象です。
補助金の対象者がFIT法を満了された方に限定されていますが、買取期間後の太陽光発電設備に対して蓄電・蓄熱設備の設置を支援することで、太陽光発電の「売電」から「自家消費」への切り替えを促しています。
太陽光発電が自家消費された分、実質的なエネルギー需要量が減少するため、低炭素化への促進と捉えることもできます。
また2018年における10kw未満の太陽光発電の売電価格は、28円/kw(出力制御義務ありの場合)または26円/kw(出力制御義務なしの場合)です。一般家庭における電気料金が1kwあたり26円程度であることから、2019年か2020年には電気料金が売電価格を上回ることになるでしょう。
太陽光発電や蓄電池が経済産業省から環境省の管轄になった背景もあり、低炭素化社会の普及が進んでいく今後、蓄電池の低価格化に合わせて太陽光発電の自家消費需要が高まっていくのではないでしょうか。